2007年11月09日

フロントフォークの進化

 サスペンションはバネとダンパーからできているといわれますが、厳密にはそれはサスユニットのことで、広い意味でサスペンションはホイールを支えるシステムのことをいいます。

 フロントサスは、バネとダンパーで前輪と車体の動きをコントロールするだけでなく、前輪を支えるとともに、ステアリングとして前輪を切る働きもしています。

 操舵しなければならない前輪を支え、しかもそれをストロークさせなければならなかったので、どのような構造がいいのか、開発者は様々なものにトライしてきました。

 古くはガーターフォークやアールズフォークなどがあり、現在でも小さいビジネスバイクにはボトムリンク式が採用されています。
 しかし、これらは、剛性的にも不利で、フリクションも大きくなっていました。
 ストロークしたときの前輪の動きも理想的ではなく、ホイールアライメントを調整するうえでも好ましいものではありませんでした。

 60年代以降のスポーツバイクでは、アウターチューブとインナーチューブがスライドして伸び縮みするテレスコピックフォークが主流になりました。
 このフォークは、前輪がフォークに沿ってストロークするため、それまでの欠点が一気に解決し、フロントサスが担うべき仕事を一手に引き受けてくれるものとなりました。


ダンパー機構の進歩

 昔のピストンスライドフォークは、インナーチューブに開けたオリフィスをオイルが通過することで減衰力を得ていました。
 そこから進化したのが、チェリアーニフォークのフリーバルブ式ダンパーです。
 これは正立フォークのアウターチューブの下にシリンダーを設けて、フォーク伸縮時にシリンダーの内側と外側でオイルを行き来させ、減衰力を得るもので、現在はネイキッドモデルなどに使われています。

 また、より完璧なダンパーとして最近のスーパースポーツが搭載しているのが、インナーロッド方式です。
 これは複筒型と呼ばれるリアショックユニットの中身をフォーク内に収めた構造になっており、減衰力特性の自由度が高く、特性も安定させやすくなりました。


正立フォーク

@インナーチューブとアウターチューブの接地面積が広く取れるため剛性が高い。
A柔らかいスプリングが使用でき、30cm以上の長いサストラベルを確保できる。
B更にインナーチューブを太くして高剛性化すると重量増加やサスの運動性が落ちる。

 テレスコピックとは、テレスコープ(望遠鏡)がピントを合せるために伸び縮みすることから名付けられた言葉です。
 このテレスコピックフォークにも欠点がないわけではなく、インナーとアウターがスライドするために、そこにフリクションが生じやすくなります。

 このため、初期のテレスコピックは、両チューブの間にかなりの隙間があり、スライドメタルとピストンで接触するピストンスライド式でしたが、今のスポーツバイクはすべてチェリアーニタイプと呼ばれるものになっています。

 このタイプは、両チューブが直接接触するため、フリクションもなくスムーズに作動します。
 また、剛性も高く、ストロークも大きく取りやすくなりました。


倒立フォーク

@高強度アルミ軽量合金をアウターチューブに使用することでステアリングまわりの剛性が向上
A曲がりが少ないため運動性が向上する
Bあまり剛性が高すぎるとフロントタイヤの接地感がつかみにくい

 テレスコピックフォークにとって、剛性を高め、作動性を良くすることは、大きなテーマでした。
 これを解決するためにインナーチューブの大型化が進められました。
 インナーチューブが太くなれば、剛性は上がり、スライド部にかかる圧力も下がるので作動性もよくなるのです。
 
 アウターチューブを、従来からの正立型とは逆の上側にセットした倒立フォークの登場は、これをさらに進めたものです。
 フォークを支える根元側の方が大きな力がかかるので、こちらに太いアウターをセットした方が剛性面で有利になり、また、アウターチューブを長くしスライド部を大きくできるため作動性も良くなります。
 
 もともと倒立フォークは、モトクロスで正立フォークのアウターチューブが路面のわだちと接触しないようにと開発されたものです。
 正立よりも重量はあるのですが、それ以外のメリットがあることから、高性能スポーツ車にとって切り離せない存在となりました。


テレレバー&シングルアーム

@減速時のノーズダイブが少ない
Aステアリングとサスペンションの機能を別々にすることでそれぞれの作動性が向上
B複雑な構造による重量と高額なコスト

 テレスコピックフォークを中心に発展してきたフロントサスですが、ヤマハGTS1000やビモータ・テージ(現在はバイルス)のハブステアリングシステム、BMWのテレレバーとK1200Sのデュオレバーなど、非通常型も開発されてきました。

 これらの良いところは、テレスコピックではフォークだけでショックの吸収、前輪の支持、操舵という働きをしなければなりませんが、それぞれの役割を分担したことです。
 このため、フォークだと作動性が悪くなりがちな路面から突き上げられた場合でも高い作動性を維持し、ステアリングが振られることも少ないといったメリットがあります。

 また、ストロークにともなう前輪の軌跡にも自由度があり、アライメント的にも有利なことに加え、ブレーキングで沈み込まないようなアンチダイブ効果を得ることもできます。
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2007年10月30日

サスペンションの重要性と役割

乗り心地以外の重要な役割

 バイクに限らず、地上を走る乗り物にサスペンションが取り付けられるようになったのは、路面のショックを吸収して乗り心地を良くするためでした。
 走行中に路面から突き上げられては大変だし、車体もショックを和らげないとダメージを受けてしまいます。
 それに、エンジンの性能も向上しスピードが出るようになり、路面のショックをモロに拾ったのでは、安定して走ることもできません。

 しかしながら、バイクも車も進歩するにしたがい、サスペンションには路面のショックを吸収することのほかに、もっと大きな役割を担うことになります。
 
 今でも、サスがなければ、路面からの突き上げで、跳ね上げられたり、振られたりで、ショック吸収の役割が大切なことは確かです。
 しかし、サスのおかげで高いコーナーリング性能が得られ、いろんな性格のバイクにあったハンドリングが得られています。

 創生期のバイクは、ステアリングが振られて怖い思いをしないように、フロントだけにサスが着けられたものがありましたが、バイクの性能が向上するに伴い、トラクションを伝えるリア側が重要視されるようになりました。

 サスの動きが高度化してきたのは、路面からのショック吸収に加え、いかに車体の姿勢変化と、タイヤにかかる荷重をコントロールするかが注目されてきたからです。


コーナーリング中のサスペンションの動き

○コーナー手前のブレーキング
 ブレーキングすると、前方への荷重移動と、バイクを止めようとするブレーキ力がフロントフォークにかかり、フロントは激しく沈みます。
 これがノーズダイブと呼ばれるものです。
 まったくダイブがないとフロントが高すぎて進入しにくくなります。
 また、リアのリフトアップも防いでくれます。
 ブレーキングしなくても、一瞬スロットルを戻してフロントを沈ませることできっかけが掴みやすくなります。
 その時リアは伸び切ろうとしています。
 簡単に伸びては不安定になるし、沈み込んだままでも、旋回性に切れがなくなってしまいます。

○コーナー侵入時
 進入時は、ブレーキがリリースされ、フロントフォークは戻ってこようとしますが、旋回Gによって再び路面に押し付けられます。
 リアもフルブレーキング時よりは少々沈んだ状態になりますが、車両姿勢は通常時よりも前下がりで、初期旋回させやすい状態となっています。
 このときの姿勢セッテイングが初期旋回のフィーリングに大きく影響します。

○パーシャルでの旋回中
 旋回中は、フロントに大きく移動していた荷重はリアに戻り、車両姿勢も中立時の状態に近づきますが、それでも旋回Gを受けているので、ストレートでバンクしていない状態よりも、前後ともサスは沈み込んでいます。
 然るべき荷重をじわっとサスが入り込みながら受け止め、しかるべきところに姿勢が落ち着くことで、安定したコーナリングができるのです。

○立ち上がり
 コーナに入ってスロットルを開け始めると、荷重はフロントからリアに移動し、脱出時の車両姿勢は、進入から旋回時よりも前上がりとなります。
 スロットルを開け始めることで、スイングアームには路面に対して踏ん張る効果も生まれ、前上がりの姿勢になります。
 そのとき、ライダーには後輪の接地感がどんどん高まってきます。
 このフィーリングがコーナリングではとても大切なことです。
 これにはスイングアームが踏ん張ることもさることながら、リアサスのセッティングが大きく関わってきます。


車とバイク

 車はコーナリング中、遠心力によってローリングが発生します。
 この時にフロントよりリアサスが固いと、リアタイヤのアウト側が踏ん張り、タイヤにかかる荷重も大きくなります。
 するとフロントよりもリアの滑りが大きくなって、オーバーステアになります。
 その逆はアンダーステアです。
 バイクは左右間の荷重の受け渡しはありませんが、前後で姿勢変化(ピッチングといいます)し、過重の受け渡しをやっています。
 バイクはサスペンションによって、前後のタイヤにかかる荷重変化を調整しているのです。



posted by nekopunch at 20:09| Comment(0) | TrackBack(0) |  ・サスペンション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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